御主人様のお申し付け通りに
私の宝物?

「私の宝物は私自身だよ。当たり前じゃん」

永田は溜め息を付いた。

「俺の一番の宝物も俺だ。だから俺が厳選して、手元に置いてあるモノ全てが宝物だ」

まわりくどーっ。

私は耳の中がこそばゆくなった。

「…トシコもだ」

…はぁ?!

私は永田にドカドカと近寄って、上から下から見てやった。

「今、なんつった!?」

「さぁ」

天井見て、惚けてる。

「…前から思ってたんだけど。出来ればもっと簡単に言ってくれないかな?」

「女子の大好きな想像力で考えてみろよ」

「あぁーっ、私は面倒臭いの嫌いなの!」

私は永田を見上げた。

「…チッ!…もぉ~…大人同士なんだから理解しろって」

「理解するのには、もっと導いてくれないと理解出来な~い」

言わしたろ。

絶対にコイツの口から、ハッキリと言わしたろ。

「…トシコが好きなんだよ」

よっしゃー!

何か永田に初めて勝利した気分。

「クソッ…何か悔しい…クソッ!」

永田ってば、恥ずかしいから舌打ちばっか、してやんの。

可愛いぞ、永田ぁ。

イエス!イエス!イエース!!

寂しがり屋で甘えん坊。

今夜から、永田の隣りで毎日眠るのか私は。

腕枕と、もう片方の手は私の手を握る。

口を尖らせて、時々ムニャムニャと寝言を言っている。

可愛い。

けど、まだ正直私の気持ちは自分自身に向けられていて。

矛盾してると、葛藤する。

他の男と住んでたら、何のために旦那と別れたんだろう。

一人になりたいと自由で孤独を選択したのに、離婚した意味がなくなってしまう。

ただ、前の旦那を傷付けただけになってしまう。

それじゃ罪悪感が残っちゃう。

「…トシコ…」

自分が思ってるよりも、永田の私への思いが強いのを知る。

「どうしたの?…なんだ、寝言か」

人間って、寝てる時が一番素直なんだって、よく聞くけど。

「…チョッチュ…チュッチュッ…シュル…」

ブルブルブルーッて、口唇を赤ちゃんみたいに震わせてる。

「よしよし」

私は、トイレに行くために、静かに起き上がった。

ずっと永田と一緒だったから、スマホが点滅してるのに全然確認できなくて。

スマホを持ってトイレに行く。

……。


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