御主人様のお申し付け通りに
少しだけ永田の帰りを待つ。

だけど、お腹が鳴るから我慢できなくなって、先に結局食べちゃう私であった。

いいの、いいの。

生きてるだけで、我慢してる事なんて、たくさんあるんだから、私は仕事して帰って来て、それまで充分我慢していたんだから。

ご飯くらいは、さっさと食べる!

テレビもつけずに、黙々と食べる!

お笑い番組も、報道番組も、恋愛ドラマも興味ない。

じゃあ、何を見るかって言うと。

歌番組か、殺人事件の2時間ドラマ。

殺人事件とドラマはハマっちゃうよぉ。

それ見ると、世の中変わった人が多くなったなぁなんて思ってさ。

何気に人付き合いの勉強になる。

猫かぶってる奴程、犯人が多くて。

はっきり言える奴程、誤解されて殺される。

私はどうかな。

永田に殺される役かな。

アイツはいつも目付きが殺気立ってるから。

食べた後で、ソファーに横になると、すぐに眠くなる。

…永田、まだ帰って来ない。

…早く帰って来てよバカ。

…唐揚げ、冷めちゃう。

…早く…帰って…来て…お願い…

…頬に指の感触?

…フニャフニャして温かいクッション?

頬ずりして見上げると永田の顔。

永田の顔!?

じゃ、その、あの、もしかして膝枕?!

「唐揚げ、美味しかった。ご馳走さま」

ニッコリ優しく微笑む永田。

だから、その表情やめなさいって。

似合わないって。

恥ずかしいなぁ、全く。

と、誉められて戸惑って赤面中。

「帰って来たら寝てたもんだから、思わず膝枕してやりたくなったんだよ」

私の口唇に触れて、何をするかと思いきや、ヨダレを拭き取った。

わ、私とした事が!!

慌てて起き上がろうとするけど、

「まぁ、まだ寝とけって」

と横にされる。

「やだ、もういいの」

「いいから、寝とけって」

やだよ、だってこんな事を男にされてしまうだなんて。

「なぁ、おまえ。唐揚げなんておまえに取ったら高度な技術だろ?それを俺に見せつけて、女アピールでもしてんの?私でも出来る!だとか思わせたかったとか?」

バ…バレてる!!!

「何でそんな、ひねくれたモノの言い方すんのさ!」

いや、何で私の意図が分かってしまうんだ!!!
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