御主人様のお申し付け通りに
永田はキーホルダーを、さっそく鍵に取り付けた。

「マジに嬉しいよ…そう思えるプレゼント、大切にするな…」

「いいのいいの、全然いいの!」

こんな事、いっくらでも永田のためなら出来るから。

「おまえ無理してない?」

「してないよ」

私が私自身の事で不安になると、永田も永田自身の事で不安になってる。

今日の、お爺さんの言葉を思い出した。

「大丈夫じゃよ。あの子の側に居たら…」

「私ね、決めたの。永遠に永田の側で添い遂げるんだって。…いいの、自分の意思なんて、もう無くなっても。そんなモノすらも、永田にくれてやるわ。実はね永田の背にこの間から、私のこの先の生き末が映画みたいに見えちゃってて…」

永田は、私を真面目な顔して見つめる。

「私はその流れに添っていくって。それから、幸せだとか不幸せだとか、もう私こだわらない。私はただ、永田に添ってく…」

「聞いてもいい?」

「何?」

「そのビジョンに映るトシコは、俺の側に居て笑ってる?」

「笑ってるよ…」

私は感情を抑えきれなくなって、立ち上がり永田に抱き付いて泣いた。

「永田だって笑ってる…結婚式で、ベールを捲って笑ってる…」

「俺たち結婚するんだな」

「時々私が永田に怒られるの…俺の言う事を聞けないのかって…」

「俺は、おまえの御主人様だからな」

「うん…だけどね、謝るとキスして永田も私もまた笑ってる…」

「そっか」

永田は私の髪を何度も優しく撫でながら、私の話を聞いてくれた。

「お互い病気の時も悩んでる時も、いつも一緒なの…」

「そうだろうな」

「同じ日々を繰り返して、そのうち子どもまで出来ちゃって…」

「えっ?…だって、おまえ…」

永田は驚いて、私に言葉を問い掛けようとした。

だから私は赤面しながら、胸の中に隠れて話を続けた。

「いいの…永田だからいいの…全然いいの…」

「それで、おまえが笑ってるんなら、俺は構わないよ?」

「笑ってるよ…永田はそんな私を見て笑ってる…だから…だから…」

涙を流しながら、私の今まで永田に言われ続けていた言葉を思い出して、自分の愚かだった固定概念を捨てた。

「分かった、もう言わなくたって俺は分かってるから…。ちゃんと分かってるから」

「今までごめんなさい…偉そうな言葉たくさん言って…嫌な思いさせてごめんなさい…」

「何で?何で謝るんだよ、意味分かんねぇよ…」

私も何だか訳が分からなくなって、ワンワン泣いた。
< 81 / 92 >

この作品をシェア

pagetop