クレナイの歌
学校から家までそう近い距離ではない。

その上、彼はのんびり歩くのが好きなため、家へ帰るまで時間がかかる。


そんなに急いだって世界のスピードは何も変わりはしない…。


口元が隠れるようマフラーをまきつけ、両手はポケットの中に。

せわしく行き交う人々を遠巻きに眺めた後、視線を逸らし、暗みがかった空を仰いだ。


いくつになっても忘れない記憶はある。
忘れられない記憶がある。
痛みがある。悲しみがある…。

絶対に忘れない。


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