モン・トレゾール

―――

――…


「――愛莉も同罪だからな」


生徒指導室の前の廊下。


背を向けた先輩は、そう言うと二度と後ろを振り返らなかった。


大会前にケガをしてサッカーを諦めた先輩は、校内での喫煙がバレて停学になった。


そして、私もその場に居たからという理由で、1週間の自宅謹慎処分を受けた。


この時の父の顔はよく覚えてる。


恥をさらすなと言って私の頬を叩いた父は、背中を向けて涙を流していた。


だけど、そんなのちっとも私の心には響かなかった。


おまえだけだって抱き締めてくれた先輩だって、最後には私を裏切って年上の女の人のヒモみたいになった。


この頃から私は、自分以外愛せなくなった。


みんな可愛いのは自分だけ。


自分がキズつきたくないから人を利用し欺(あざむ)いて生きてる。


だったら私だって、他人を利用してもいいじゃない。


他人(ひと)と同じことをして何が悪いの?
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