モン・トレゾール

腕組みをして私を見下ろす彼から深い溜め息が聞こえる。


「あのぉ……」


「なに?」


「……いえ、な、なんでもありません」


いつもなら、絶対こんな冷たい返しかたなんかしないのに。


なんか、今日ってこんなのばっかり。


「そこの荷物片付けといて」


テーブルの横に置かれたキャリーバックを指差すと、彼は寝室の方へと姿を消す。



「……もう、勝手なんだから」


ちょっと前まで出張って言葉聞くだけで気分が落ちてたっていうのに、最近はそれが多くなってきてて結構慣れっこになってきてる。


ただ、この出張中の私の行動っていうのが問題なわけで――



「ホラ」


コンと何やら硬い箱の角が後頭部にあたる。


「やるよ」


「これって……お、みやげ?」


怒ってて口数が少ないくせに、こういうところは絶対外さない。


彼のこういうとこはずっと変わらない気がする。
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