モン・トレゾール
「間違えたって?」
全く意味がわからない私は思わず首を傾げてしまう。
一体何を間違えたって言うんだろう? 本当に好きなら、そう相手に伝えればいいだけなのに。
……まあ、中身のないような恋愛しかしてこなかった私が言うなって話だけど。
「処女にこんな話したってどうにもなんねぇってことだよ」
このお店は郊外にある為か、中はライブハウスのように面積が結構広い。
だけど、仕切りがあるからと言って隣の人達にまるっきり私たちの会話が聞こえないとは限らない。
そんな場所で、この男はまた何てことを言い出すのよ!
「コ、コホン。戸田さん?」
「なんだよ、咳なんかして。風邪でもひいたのか? オマエ、見た目からして体弱そうだもんな」
勝手な発言を続ける目の前の男の誤解を解くチャンスは今しかない。
そう思うと、恥ずかしさで一杯になりながらも、私は勇気を振り絞った。
「……良い機会だから言っておくけど、私……男の人と付き合った経験くらいあるから」