モン・トレゾール
「オイ」
頑として動こうとしない皆川の腕を引っ張ろうとした時、遮るように強く左肩を掴まれた。
「……いってぇ」
よけきれず、そのまま皆川が座っていた席に背中がぶつかるとバランスを崩してよろめいてしまった。
「……社長?」
――どうしてこの店にこの人がいるんだ?
「理!? ちょっ、ストップ、ダメ!!」
そう思った瞬間、皆川が慌てて俺を睨む社長の腕を制止した。
それでも、今にも殴りかかってきそうな勢いだ。
この女に関わってからまるで良いことがない。
自分に見合う男じゃない付き合わない――そうアイツに言われてからは、どんな卑怯な手を使っても上だけを目指してきた。
男であろうと女であろうと使えるものは何でも利用してきたというのに。
この女を見てると、そんな過去の自分の姿があまりにも滑稽に思えて仕方ない。
とりわけ仕事が出来るわけでもねぇし、頭の回転が早いわけでもねぇ。
それに、どう考えても女を武器にして秘書になったようにも思えねぇ。
それなのに、肝心なとこで胸にグサっと刺さるようなことを言っては説教までしようとする。
そんでもって、今回は――自分の上司まで登場かよ。