モン・トレゾール
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……マズい、マズい、マズい、マズい
この様子じゃ、完全に怒ってる。
まさかここに理が来るなんて思ってもみなかったけど、よく考えたら会社の前まで迎えに来てた永井(なが)さんが連絡しててもおかしくないんだった。
……ど、どうしよう
これは完全に私のミスよね? あまりに戸田さんが小さい男だったから、どうにかして応援してあげようって思うがあまり、時間のことなんてすっかり忘れちゃってたわ。
「今コイツの腕掴んで、何しようとしてた」
全力で押さえてるのに、凄い力。
これ以上、圧(お)されたら後ろに転んじゃいそう。
彼の視線の先はさっきからずっと戸田さんにあって、私のことなんて見えてないみたい。
「あ、あのね。理、これには色々理由があって」
「おまえは黙ってろ」
「……」
こ、怖い。
でも、ここは私が止めないと。お店の中で、なにしでかすか分かったもんじゃないわよね?