モン・トレゾール
すっかりシーンと静まり返ってしまった、私達の周り。
さっきまでいい感じでくっついていたカップル達も、今や見世物状態で私達の方を凝視している。
中でも一番私の顔をジッと見ているのは、戸田さんだ。
「自分が言うなって言わなかったか?」
静寂を破るように口を開いたのは彼だった。
「……うっ」
……そ、そうです。返す言葉も見当たらないです。
「オマエは戸田と付き合ってるんじゃなかったのか?」
もうこうなると、どんどん彼の意地悪が進んでいく。
「……ごめんなさい」
観念したように俯きながらそう謝ると、彼の胸を押さえていた手を離した。
恐ろしくて戸田さんの顔を見れない。
だけど、明日からまた机を並べて仕事していかないといけないし。
「戸田さん。隠しててごめんなさい……実は私、社長と結婚、してるの」
――この辺で、覚悟を決めるしかないわよね。