モン・トレゾール

『――とにかく、二人を会わせないようにすれば、直接それが彼女の起爆剤になることはないだろ?』


「”会わない”ねぇ」


これまで何度もそうしようとして。その度に失敗してきたんだ。そう上手くはいかねぇーよ。


『……プッ、今のおまえのその姿、昔のおまえの女達に見せてやりてぇよ』


絶対幻滅するだろうよ、とかふざけたことを抜かすと無性に手元の電話を切りたくなった。


「切るぞ」


『おい! ちょっと待てよ。ったく、気が短けぇ奴だな。今度の創立30周年記念パーティーの時にあの子も来るみたいだぞ』


「”あの子”って誰だよ」


30周年記念パーティーなんて、親父の奴……そんなものわざわざやるのかよ。


『ほら、あの子だ……あー、名前が出てこない……大学の時、おまえが付き合ってた……ゆり、そう! 氷堂百合(ひょうどうゆり)だ』


「……だから、なんだって言うんだよ」


てっきり心配してかけてきたと思ったのに。


こいつはわざわざこんな夜中に電話をかけてきて、俺をおちょくりたいだけなのか?
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