淋しいお月様
「どうだったの、行脚は」

「ん~、北日本行ってきた。一週間くらい東京にいて、また今度は西日本巡り」

朝まで飲んでいたとはいえ、セイゴさんは酔っ払った風を見せなかった。

お酒に強いのだ、このひとは。

「飲んでたって、打ち上げ?」

「そう」

「仕事のひとと?」

「そう」

私のベッドにどかっと身を落とすセイゴさんに、私は思い切ってみた。

昨日のライブチケットの半券だ。

それを、彼に見せた。

「何? チケットか。……って、あれ?」

「多久美省吾。セイゴさんのことでしょう?」

「えっ、来たの? 知ってたの?」

動揺するセイゴさん。
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