淋しいお月様
「そう」

「いばらの道だよ。この先頑張っても、ちゃんと俳優としてやっていける保障はないんだからね。お金がなくても、ちゃんとした仕事に就いてなくても、だからと云って、演技だけで食べていけるかっていうと、それは解らない。でも、スーツ着て高給取りよりも、ガソリンまみれで、ハンバーガーまみれでも、夢がある。これだけは、自負できる――なんの自信もない僕だけど、それだけは」

ランチを食べる手を止めて、彼は真っ直ぐした瞳で語る。

私より年下なのに、何だか大きく見えた。

夢、なんて私、ないよ。

無我夢中で静哉を追ってきて、それで今は宙ぶらりんな生活。

ダメだなぁ。私も頑張らないと。

私は自然と姿勢を正した。

私の周りは、輝いているひとでいっぱいだ。

音楽やってるセイゴさんもそうだし、そのセイゴさんを追っかけてるユアさんもそうだし……。

私も、何か、頑張らなくちゃね。
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