淋しいお月様
すると、彼はぱっと顔を上げた。

「バックトゥザフューチャー、僕DVD持ってるよ。アメリカンプレジデントも。じゃあ、何ならうち来る?」

「ほんと? うちDVDプレイヤーなくてね。じゃあ、いつかお邪魔しようかな」

「うんうん。近いうちにおいでよ」

若森くんが微笑む。私も微笑みを返す。

趣味が合った。それだけで、何だか彼との距離が一歩、近づいたような気がした。

「次のお休みはいつ?」

若森くんがハンバーグランチの付け合せのにんじんを口に運びながら、尋ねてくる。

「ん~、と、あさって」

「そう。じゃあ、僕も合わせようかな」

「大丈夫なの?」

「シフト替わってもらえば大丈夫だよ」

「劇団の方は?」

「劇団が始まる前までだったら、大丈夫。大体夜の9時10時に始まるから」

「随分遅い時間なんだね」

「うん。みんな、バイトと掛け持ちしてるからね。僕みたく」
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