淋しいお月様
「あの、ここってフリートークですよね。ノンアダルトじゃないんですか?」

私は冷静に答えた。

『えっちトークだと、払う通信料が倍かかるんだよね。ねえ、触ってる?』

「触ってません!」

『そ』

ぶつっ、と相手が電話を切る音が聞こえた。

『あらら~。お相手が、退出しました。またしばらくBGMを聴いてて、待っててね』

やけに明るい女のひとの電子音。

私はやれやれと思い、電話の終話ボタンをタッチした。

はぁ~。

世の中は、男と女の愛欲にまみれているのか。

私は、ただ単純に、話をしたいだけなのに。

男女関係なく、他愛ない話をしたいだけなのに。

欲望のカタマリ。嫌になっちゃう。

私が、淋しいから、それを埋めようとするのも、欲望なのかもしれないけれど。
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