淋しいお月様
夕暮れの観覧車は空いていて、私たちは並ばずともゴンドラに乗れた。

「うわ、ぐらぐら揺れる」

私が片足をゴンドラに入れた途端、ゆらゆらと箱は揺れたのだ。

私、そんなに重いかしら……?

「大丈夫? 俺も入るよ」

そう言ってセイゴさんも、中へ。

「ドア、閉めますね。いってらっしゃい~」

道化の格好をした観覧車のスタッフのひとが、鍵をかける。

私たちは、ふたりきり、空へと放たれた。

向かい合って座っていたけれど、ゴンドラが動いてしばらくすると、セイゴさんは私の隣へ座ってきた。

わ。また、キスできちゃうような距離……。

私はどきまぎしてしまう。

「セイゴさん、近い……」

「いいじゃん。同じ方向の景色、見たいから」

そう言って視線を外に向ける彼。

あ、そういう理由だったのね。

私といちゃいちゃしたいから、ではないのか。

私はそんな自分が恥ずかしくなった。

その思いをかき消すかのように、セイゴさんは言った。
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