淋しいお月様
「星羅ちゃん、夕陽で顔が真っ赤だ」

ふと、顔を向けられる。

どっきん!

それだけで、どきどきしてしまう。

「そういうセイゴさんこそ、真っ赤だよ」

「ん。どきどきしてるからじゃないかな」

そう言って、照れたように鼻の下を拭うセイゴさん。

「どきどき、してるの?」

「してる。それが、高い所にいるからなのか、星羅ちゃんとこんなに密着しているかなのかは、解らないけれど」

「私も、どきどきしてるよ。高い所は平気なのに」

「じゃあ、俺にどきどきしてるんだ?」

「――たぶん」

すると、セイゴさんはふと、窓の外を見る。

そして、また、私を見る。

「てっぺんだ」

そう言って、セイゴさんは震える唇で、キスをくれた――。
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