淋しいお月様
「ひどい熱! 体中、あっついよ」

「はい……」

私の返答はおぼろげだった。

意識が朦朧としていた。

「病院行こ、びょーいん。連れて行くから」

「……ふにゃあ」

私の返答は、言葉になってなかった。

立っているのでさえ、しんどかった。

「インフルエンザかもしれないだろ。待ってて、車出してくるから」

「……ふぁい」

「その間に、着替えてて」

そう云って、お兄さんは私を玄関に座らせ、外へ出て行ってしまった。

病院かぁ。

連れてってくれるのかぁ。

また、何だかひとの優しさに触れて、ほんのりこころが温かくなった。
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