淋しいお月様
連れてこられたのは、小さな部屋だった。

ベッドと、それから大量の本棚があるところだった。

「天野さん。念のため、マスクつけてね。あ、付き添いの方も」

看護師さんはそう云って私にマスクをつけてくれた。

「早めに診察するよう、言っておきますから」

そういい残すと、彼女は部屋を出て行った。

「横になりな。せっかくのベッドなんだから」

お兄さんはマスクを装着しながら、優しく言ってくれた。

「うん……」

私は上半身を起こしているのがきつくて、言われたままにした。

ベッドに横たわると、無重力状態のようになった。

さっきまで、体が重くて重くて仕方なかったのに。

お兄さんは、白くて清潔な毛布を私にかけてくれた。

「眠ってな」

「……眠くない」

「目、つぶってな」

「うん……」
< 63 / 302 >

この作品をシェア

pagetop