お姉ちゃんの憂鬱

二学期も後半に入り、日に日に秋から冬へと季節が移ろいゆくそんな今日。

朝登校すると、直くんの教科書が全て辞書にすり替えられていた。




直くんに呼ばれて廊下の備付ロッカーをのぞきに行くと、見事に中身が全て辞書になっていた。



「なぜに辞書…?」


「もっと言葉の勉強をしろという誰かからのメッセージでしょうか?」




辞書の種類は国語、漢字、古典、漢和、英和。そしてなぜかイタリア、フランス、ドイツ、中国語辞典まで揃い踏みだ。



「…なんの前触れなんだこれは。いたずら?」


「さあどうなんですかね。とりあえず教科書がないと困ります」


「それもそうだね。今日はとりあえず隣の人に見せてくれるように頼みなよ」




いたずらにしても変に手の込んだいたずらだな。

誰がこんなくだらないことをするんだ。



その後、登校してきたいつものメンバーにそのことを説明すると、まどかとメグは爆笑、さぁちゃんはちょっと不審がっていた。



「山さんもメグ君も笑うなんてひどいです」


「そうだぞ二人とも。直くんだって、教科書がなくなって悲しんで…」


「でもどうせすり替えるならハリーポッター全巻とすり替えてほしかったですね」


「…何、かーちゃん?直江が悲しんで?」


「なかったわ」



どこまでも図太く生きろよ直くん。




「でもさ、実際おかしくない?なんで教科書すり替えられなきゃいけないわけ?」


「まぁ、おかしいことに変わりはないわな」


「誰かのお茶目ないたずらじゃん?きっと明日には戻ってくるでしょ」


「うーん。そうだといいけどねー」





< 213 / 335 >

この作品をシェア

pagetop