Love their
第5章―星の降る夜
店を出た後、レイは手帳に挟んであった彼の番号を自分の携帯に登録した。


名称―、空白のままで。


まだ、彼の名前を知らなかった。



彼と偶然逢って、今日また偶然再会して。


私たちはたぐり寄せるかのように互いの存在を確かめ求めた。


名前なんて、知らなくてもいい。



飲んでいる間に上がった雨は道路に幾つもの水溜まりを残して何もなかったように去っていったようだ。


空を見上げると、大きい雲の群れが空を早足で駆ける。


雲と雲の隙間から見える月と星が暗い夜空を一際明るく見せた。


夕方とはうって変わって夜空に映える白い雲の流れの早さに目がついて行けない。


見続けていると、自分の立ち位置さえも見失うくらいに。



店の前で電話して待つのもどうかと思ったので、レイは少し歩いていた。



サトルが浮かぶと調子に乗って飲みすぎたようだった。


これじゃ、自分が先に潰れそう。


冷たい夜風で酔った自分を何度もリセットしながら、携帯に登録した彼の番号を眺めながら歩いていた。



何度目かのリセットの後にまだ営業中のカフェがあったので入ることにした。


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