十人十恋
「え、なぁ、あの子誰?」
総活か何だかの、グループワーク。
適当に考えてるフリだけして、後はそれらしい意見を言っとけばいいか、なんて思っていたのに予想もしない出来事が起きた。
なんだ、あの可愛い子。
その子は俺の中の『理想の彼女』を具現化したみたいにドンピシャだった。
ちょっと控えめで小動物みたいで。
それに、笑顔が可愛くて
「えへへ」って笑いそうな感じ。
『守ってあげたい』。
そんな感情が一目見た瞬間湧き上がった。
俺はもう一度、そっと『彼女』を盗み見る。
グループワークが終わってHRに向かうんだろう。彼女はちょこちょこと小刻みに足を動かしていた。
「村西さんだよ。知らねーの。」
彼女に見とれていると、隣にいた津仲が怪訝そうに言った。
「有名だろ。陰気な美人って。」