深い闇の中から
持ち上げてみたトランクは何か入ってそうで、何も入っていない重たさではある。

興奮する気持ちも落ち着き、ふと、自宅の玄関前に立ち無意識に周りを見渡していた。

隣の家の家族とは、昔はよく、旅行とかにも出掛けていたものだ、そんな事を思いながらも、この町は幼い頃から見ていた町並みのはずなのに、色褪せて見えた。

久しぶりに外に出たのが、雨の日だったからだと自分の気持ちに言い聞かせた。

誰かに見つかるのが怖い、足早に自宅に入っていった。

玄関をあがると、うるさいはずの二人が、沈静していた。
また、一時の休戦しているのだろう、しばらくは、冷戦状態である。

10畳ほどの広さのリビングにソファーと小さなテーブル、テレビとどこの家にもありそうな部屋だ。
覗いてみると疲れはてたのだろう、黙り込んで座っている二人がいた。
気まずいような居心地が悪いようなそんな気持ちだ、二人にバレないように、そっと通り抜ける。
そっと廊下を歩き、自分の部屋までの階段を上がる、上がった先の、右手側が、自分の部屋である。
少し説明くさい気もするが、それが小説と言う物なのだろう。

部屋に戻り、床にトランクを置いた。
開けてみたい衝動はあるが、得体の知れない物への恐怖心と言うものもあり、開けるのを拒んでいる。

数分間、気持ちを落ち着かせ、トランクを開ける決意をした。
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