堕ちてくる
教師
学校に行っていないと、割とする事がない。それは、彼も同じだった。何の気なしにテレビを点け、眺めるように見る。彼の日課だ。
今日も、いつものように眺めていた。
「この事件をどう思いますか?近藤さん。」
キャスターが、コメンテーターに意見を求めていた。
―――近藤さん?!
特に理由がある訳ではないが、彼は近藤さんと呼ばれるコメンテーターが好きだった。若干丸みを帯びた顔が、荒んだ彼の心の清涼剤になっているかのようだった。
テレビの画面を注視した。そこには、にわかに信じられない事件が映っていた。
―――死んだ?中島が・・・?
昨日の坂井の事、そして、今テレビに映っている中島。彼をいじめていた人物が、続けて奇妙な死に方をした。何か関係している気がした。彼の気持ちと何かが関係している気がした。
昨日は、中島の事を、とても深く憎んだ。おとといは、坂井だ。果てしなく様々な考えが、頭をすごい速度で駆け抜けていく。考えをまとめるには、時間が必要だった。しかし、彼の行動を妨げるように、玄関のチャイムが鳴った。
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