堕ちてくる
横顔
「どうした、葉月。」
この野性味溢れる声は、剛田だった。
「あ、拳ちゃん・・・。ちょっと、仕事でね。」
剛田と一緒にいるのは、彼の元に訪れた彼女だった。葉月は剛田に、昼間あった出来事を愚痴ろうとした。
「あぁ、待て、待て。その前に、久しぶりに会えたんだ。旨いものでも食おうぜ。」
店員を呼び、適当に注文をした。そんな何気ない仕草を、葉月はじっと見ていた。
「おいおい。なんだよ、何見ているんだよ。」
「だって、好きなんだもん。拳ちゃんの横顔。」
「ば、馬鹿言うんじゃないよ。それより、さっきの話、なんだっけ?」
照れ隠しする姿が、いつもの剛田からは想像できないほど子供っぽかった。ふたりは、目を見合わせ笑いあった。葉月は、いつの間にか、昼間あった出来事の事など忘れてしまっていた。
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