堕ちてくる
生徒
「悪いな。」
言葉に悪びれている様子は、まるで感じられなかった。
「本当になんなのよ。まだ、この学校に来て二日目なのよ。教頭先生達もびっくりしてたじゃない。いきなり、警察手帳出すなんて。」
言葉とは裏腹に、表情はとびきりの笑顔だ。剛田はどちらかと言うと、ぶっきらぼうな方だ。自分から会いに来るなんて、まずあり得ない。それが会いに来てくれたのだ。例え、それが仕事のためでも、葉月にはうれしかった。
「ちょっと、生徒の事で聞きたい事があってな。」
「生徒の事?」
剛田の表情が気になった。まるで、生徒の中に犯人がいる。そう言っているようだ。
「いったいどうしたって言うのよ。確かにこの学校の関係者ばかり死んでいるわ。でも、それは事故でしょう。隕石を人の力で落とすなんて、出来っこないわ。」
「そんなに怒るなよ。確かに葉月の言っている事は正しいと思うよ。けどな、隕石が毎日人を殺す。それもこの学校関係者ばかり。それを疑わない刑事なんていないさ。」
こうなると剛田は止まらない。それをよく知っていた葉月は、黙って頷いた。
「何を知りたいの?」
「今まで死んだ奴を恨んでいる奴。それを知りたいんだ。」
「それは難しいわね。死んだ坂井先生は、あんまり生徒達の評判良くなかったし・・・。それに死んだ生徒達の事を悪く言うのは・・・いやなんだけど、中島君も工藤君も、なんて言うのかないい生徒ではないのよ。いわゆる不良って奴?だから恨んでいる生徒は多いんじゃないかな。」
「そっか・・・。」
剛田は肩を落とした。その表情は葉月にはつらいものだった。
「ごめん・・・。」
校舎を出ようと、剛田は振り返った。
「悪かったな。時間取らせて。」
葉月の頭に何かが浮かんだ。
「待って。いた。いたわ。」
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