堕ちてくる
螺旋
―――葉月。葉月って言うのか。
彼は、彼女の名前を知った喜びを噛み締めていた。それと同時に、剛田に対する激しい怒りも感じていた。
―――なんなんだ、あの男。あの男さえ来なければ、彼女と話せたかも知れないのに・・・。
彼が彼女に対して感じている感情は、完全に恋愛感情へと変化していた。ただ、その事には、彼自身は気が付いていなかった。それは、彼が知ったはじめての感情だったからだ。
―――声が聞きたい。話をしたい。・・・したい。・・・したい。
欲望は止まる事を知らない。
―――あの男を殺す。殺す。殺す。
ふたつの感情が、螺旋を描いて宇宙へと昇っていった。
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