社長に求愛されました


「高瀬? やけに素直だけどどうしたの? 大丈夫?」

顔色は少し悪いが熱はない。
それを確認しながら聞くと、ちえりは目を閉じたまま答える。

「大丈夫じゃないですー。胃痛いし、それになんか、ふわふわしてて……」
「ふわふわしてどんな感じ?」
「船の上とかの気分……あと熱い」
「熱いって言っても、それ一枚しか着てないんでしょ?」
「でも熱いー……」

完全に酔っているちえりにため息をつきながら、綾子が鞄から出したタオルでパタパタと仰いでやる。
本人も言うように熱いようで、確かに少し汗をかいているようだったが、顔色からして冷や汗ではなさそうだと胸を撫で下ろす。

水も多めに飲ませたし、今は胃痛や吐き気があるかもしれないが、時間が経つとともに症状は緩和してくるハズだ。
胃痛にたまに眉をしかめるちえりを見ながら、何かちえりの気を紛らわせないかと会話を探す。

そして、そういえば、ちえりがさっき、篤紀と結婚したいだとか口にしていた事を思い出した。


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