社長に求愛されました


「でも、急性アルコール中毒とかあるものね。一気飲みしたってわけじゃないにしても、ありえない事じゃないのかも」
「え、死ぬんですか? 私……」

アルコールのせいでよく回らない頭では、ぼんやりとしか物が考えられない。
それに増して、ほとんどの意識を胃痛に持って行かれているせいで、ちえりの思考回路は正常ではないようだった。

「そういえば、ブーケプルズ、和美さんがやっぱりゲットしたらしいわよー。
でもね、たまたま黒崎社長が席外してたから予定通りいかずに、大して喜びもせず終わったって」
「ブーケ……ちょっとやってみたかったなぁ」
「いいじゃない。高瀬なんてこれからいくらでもそういう機会あるわよ。
あと、4,5年もすれば友達がみんな結婚し出すんだから」
「結婚……してみたかったなぁ」
「結婚? 高瀬って結婚願望強かったの? だったら社長とすればいいのに」
「……私だって、したかったですよぉ」

そこまで会話をしてから、綾子がちえりの様子がおかしい事に気づく。

酔って胃痛と吐き気を併発している事は知っていたが、意識はきちんとしていると思っていた。
けれど、どこかおかしい。
そういえば先ほどから、全部語尾が伸びているし……と思い、綾子がちえりの顔を覗き込む。




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