社長に求愛されました


「気にしないで。
おばさんが気を許してくれてるんだって分かるし嬉しいんだけど、本当についつい謝っちゃうだけだから」

笑いながら言うちえりに、そう言ってくれると助かるわーと笑っていた洋子が、思い出したように言う。

「あ、そういえばちえりちゃん。お金、毎月入れてくれるけど大丈夫なの?
うちは確かに繁盛してないけど、ちえりちゃんや慎一くんの面倒くらい見られるんだから気にしないでいいんだからね」
「でも、大した額入れてないし大丈夫だよ」
「だけど月三万も入れてくれてたら手持ちなくなっちゃうでしょう?
家賃だとか食費もかかるんだから……慎一くんの学費の足しにって思ってるのは分かるけど、いいのよ本当に。
慎一くんだって真剣に勉強してくれてるし、こう言うのもおかしいけど学費も払いがいがあるのよ。
うちの歩と違って」

最後の言葉を強調して言った洋子に、ちえりが笑う。

「そういえば、あっくんも今日大学?」

あっくんとは、洋子の子どもである中谷歩の事だ。
ちえりと同い年の歩は現在大学三年生で、実家から通っている。

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