社長に求愛されました


月の隣に誕生石の名前、写真、そしてその石の持つ意味合いが書かれていた。
自分の誕生石がダイヤモンドである事は当然ながら知っていたちえりは、四月の部分をさらっと読んでから、そういえば……と四月よりふたつ上の段にある誕生石に視線を移す。
篤紀の誕生日が二月である事を思い出したからだ。

そして、そこに書かれていたアメジストの写真を見て……昨日綾子に託したネックレスを思い出した。
ペンダントトップにふたつのクロスがついているデザインのネックレス、そのうちのひとつがダイヤだという事は分かっていた。
だけど、もうひとつの薄い紫色の宝石が何なのかは分からなかったのだが……。

アメジストの写真を見て、これだったのかとふっと笑みがこぼれた。

誕生日やクリスマス、そういうイベント事を大事にする、意外とロマンチストな一面を知っているだけに、あれは篤紀がわざわざ選んでくれたものなんだという事を改めて確信する。

きっと、クロスに敷き詰められるふたつの宝石がなんなのかを知って、買わずにはいられなくなったのだろうと……篤紀があのネックレスを見つけてから買うまでの様子が手に取るように分かって、自然と笑みがこぼれていた。

だけど次の瞬間には、こぼれていたハズの笑みは微塵にもそれを感じないほどに姿を消し、悲しみに歪んだ瞳からは涙が溢れていた。
ポタポタと、頬を伝った滴が雑誌に落ちて染み込んでいく。


< 135 / 235 >

この作品をシェア

pagetop