社長に求愛されました


そのひとつが、黒崎会計事務所のデータ入力のバイトでもうひとつが、事務所近くのコンビニでのバイトだった。
普通の事務ではなく会計事務所の事務を選んだのは、会計事務所を開いていた両親の影響だ。

昔からずっと仕事を見てきたちえりは簿記に興味を持ち、高校の時に自己流の勉強のみで日商簿記の二級を取ったほどだった。
だからこそ、洋子も会計士になったらどうかとその方面の専門学校を進めたのだ。

だけど、会計士になるためには専門学校で二年勉強してその後実務を数年積む必要がある。
実務を積んでいる間の給料は高いものではない。
やってみたい気持ちはあったが、金銭面を考えれば頷けるものではなかった。

そんなこんなで、篤紀の下で短期のバイトをする事になったちえりだったのだが。

当初の予定だった二ヶ月間が経とうとした時、もうその頃にはすっかりちえりに入れ込んでいた篤紀に続けられないかと聞かれ。
その後、深夜のコンビニでバイトしているところをたまたま仕事帰りの篤紀に発見され……。

こんな深夜になにやってんだだの、危ないだの、完全にプライベートに干渉されたお説教をされた後、だったら朝から夜までうちで働けばいいだろ!と怒鳴られて。
まぁ、時給的にもそっちの方が助かるかもしれないと発言したばかりに、その一週間後にはコンビニ側にも話がつけられ、ちえりは半ば強制的に黒崎会計事務所に送還されたというわけだ。







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