社長に求愛されました


ちえりが通っていた高校は普通科だったため、就職口は少なく、そのどれもが高卒という条件のせいか給料があまりよくなかった。
はっきり言えば、バイトをふたつ掛け持ちした方が断然いい。

もちろん、きちんとした企業に就職できれば福利厚生やボーナス、交通費と色々利点は見えてくるわけだが……。
ちえりの高校にきた求人の中に、そういったものは見つけられず、高校生のちえりから見ても顔をしかめて唸ってしまうような求人ばかりだった。

そこで、とりあえずちえりが高校卒業してから慎一が大学を卒業するまでの五年間、就職はせずにバイトをさせてもらえるように洋子たちに頼んだのだ。
最初こそ、そんな理由で……と専門学校への進学を進めた洋子だったが、ちえりの母親似の頑固さは分かりきっていただけに、何度目かの話し合いで洋子が折れた。

そして、無理は絶対にしないという約束でフリーター生活を決めたのだった。

とりあえずかけもちをしようと考えたちえりは、ひとつは事務系のもの、もうひとつは身体を動かすものと決めて求人情報誌とにらめっこし、高校卒業した三日後にはバイトを決めていた。



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