社長に求愛されました



「しかし、お金のかかってそうなパーティーね」

式場を貸し切って行われている白石出版のレセプションパーティー。
式場自体初めて足を踏み入れたちえりにとっては、まるで古城のような作りの会場はただただ感心するのみだった。
床に敷いてあるカーペットや壁にかかっている絵画、ランプ、ちょっとしたインテリアまですべてが統一されていて、童話の中にでも迷いこんでしまったような感覚だった。

最初に挨拶があり、そこからは親睦を深めるためとの事で立食パーティーの形が取られて、早一時間が経過しようとしていた。

「すごいですよね。デザートだけでも20種類くらいあるし」
「バイキングだったら一万弱は取られそうな内容だものね。料理のレベルも高いし。
でも、誰の支払いになるのかしらね。これ。
花嫁さんは専務の娘さんだから専務かしら。それとも社を挙げてやってるわけだから会社なのか」
「……綾子さん、そういう話はここではあまりしない方がいいかと」

放っておけば、会場の貸切代や料理にかかった料金まで計算し出しそうな綾子を、ちえりが止める。

「じゃあ、白石社長がスピーチで何回かむか賭ける?」
「……そういう話もちょっとしない方がいいかと」



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