恋はしょうがない。~職員室であなたと~
真琴はあれから迷った挙句、「欠席」の返事を静香に送った。
自分が平静でいられる自信もなかったが、自分がいると古庄の心を乱してしまうかもしれない……と思ったからだ。
「好きな人が幸せになろうとしているんだから、祝福してあげなきゃね。有紀ちゃんが祝福してくれると、古庄先生も喜んでくれると思うよ?」
真琴がそう言葉をかけると、有紀の切ない目にはたくさんの涙がたたえられていた。
真琴の言葉を受け止めると、有紀は唇を噛んで小さく頷いた。
いつものように有紀が真琴に付いて職員室までやってくると、そこには古庄がいる。
有紀が真琴の背後から、おずおずと古庄の前に進み出て「古庄先生」と声をかけた。
新聞を読んでいた古庄が有紀の方へと目を移し、そして、有紀の背後にいる真琴へも視線をよこす。
「あの、古庄先生……。ご結婚おめでとうございます」
いきなり有紀からそう言われて、古庄は面食らって固まってしまった。
けれども、我を呼び起こして、有紀へと薄く笑いかける。
「……ありがとう」
とりあえず、静かな声で古庄は答えた。
しかし、その後の言葉は出てこない。
あまり嬉しそうでない古庄の反応に、有紀も少しうろたえる。
「古庄先生、お祝い言われすぎて、ちょっとこりごりなのかもね。でも、おめでとうございます。お幸せに」
真琴が気を利かせて、有紀の背後から場を和ませようとそう言った。
古庄の想いを含んだ視線は、真琴を捉える。