恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「仮に君に逢わなかったとして、あのまま芳本さんと結婚していても、きっとうまくいかなかった。俺は芳本さんのことを嫌いでも好きでもなくて、何にも感じていなかったから。
そんなんで結婚しても、虚しい生活を送るだけだろ?
……だから、君はそれに気づくきっかけをくれたんだから、君が不幸を招いたわけじゃなくて、もっと不幸になるのを防いでくれたんだよ」
初めて真琴に想いを告げた時には、焦って気持ちを上手く伝えられなかった古庄だが、自分の心とじっくり向き合って行動を起こしただけあって、落ち着いて自分の考えを真琴に表現した。
「……でも、何も感じられなくても、一緒に生活していくうちに、想いが通じ合えるようになるかもしれません……」
真琴は、それでも静香の心を思いやって、古庄が静香と一緒になった場合の幸せを模索する。
古庄は、そんな真琴の心の壁を、一つ一つ壊していくしかなかった。
「うん、そういう夫婦もあるかもしれない。でも俺には、それは無理だ。」
「どうして無理なんですか…?」
「それは、君に出会ったからだよ。寝ても覚めても君のことだけ想っているから、想いが通じ合えるのは、君しかいない。
こんなにも愛しくて、俺のすべてを捧げてもいいと思えるのは、今までもこれからも、君しかいない」
そう語った古庄の言葉が、熱せられた矢となって、真琴の心を貫いた。
愛しい人が、そんなにまで深く自分を想ってくれていることに、真琴の肌は粟立って体が震えた。
これ以上古庄と一緒にいたら、真琴は自分を抑えられずに泣き出してしまう。
そして、本当の気持ちをすべて、古庄に打ち明けてしまうだろう。
何者にも代えがたく、古庄のことが好きだということを……。
真琴は手にあった数冊の問題集を置いて立ち上がった。
愛おしそうに見つめてくれている古庄の視線を感じながら、戸口へと向かう。
「……束ねる紐を取ってきます……」
そう言い残して、古庄の側から急いで立ち去った。