蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
暫く、子猫たちを楽しげに見ていた藍は、一匹の子猫に目をとめた。
六匹の子猫のうちで一番体が小さい、白いメスの子猫。
色素の薄い水色に近いブルーアイ。目尻には、目ヤニがこびり付いていて、ハッキリ言って、見るからに弱々しい。
他の兄妹たちが、母猫の茶トラと、父猫の黒い毛並みのどちらかを受け継いでいるのに対して、その一匹だけが真っ白い毛並みをしている。
体力も他の子猫に劣るのだろう、乳を飲むのも一番端っこで、他の子猫に押しつぶされそうになっていた。
「この子……。この白い子猫、頂いてもいいですか?」
藍が、その子猫を指さしながら君恵に尋ねるのを見て、何故か拓郎は『やっぱり』と思った。
なんとなく、そんな気がしたのだ。
「う~ん。このオチビさんねぇ……」
じっと、白い子猫に熱い視線を送る藍に、君恵は困ったように言葉を濁した。
「あ、他に、欲しい人がいるのなら、良いんですけど」
そう言えば、君恵から『貰い手が決まった子猫がいる』と聞いていたことを思い出した藍は、慌てて言葉を付け足した。
「そうじゃないんだけどね……」
と、君恵は意味ありげに、拓郎に目配せをする。