蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

枕元のデジタル時計を確認すると、午前二時。


大通りから少し奥まった場所に建っているこのアパートには、車の音も届かない。


シンと静まり返った部屋の中に、苦しそうな藍の声が響いてくる。


「藍ちゃん?」


拓郎は布団の上で半身を起こして、襖の向こうでベットに寝ている筈の藍に声を掛けた。


「やっ……うん……」


答えの代わりに返ってきた苦しそうな呻き声は、次第に大きさを増していく。


その声に尋常では無いものを感じて、拓郎は慌てて起きあがると、襖を開けてベットサイドまで歩み寄った。


「藍ちゃん?」


サイドテーブルのスタンドの明かりを付けて声を掛けるが、仰向けでベッドに横たわる藍は激しく首を左右に振るばかりで返事をする様子はない。


固く閉じた瞳からは、光の粒が止めどなくこぼれ落ちていた。



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