蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「実は、お願いがあるんです」


「うん?」


「今日はお仕事休みって言ってたでしょ? だから、連れて行って貰いたい所があるんですけど」


「うん?」


拓郎は、楽しげな藍の顔をぼんやりと見詰めた。


別に藍の話の内容に意義があるとかそう言う訳じゃなく、ただ単に脳細胞がまだ起ききっていないのだ。


ハッキリ言って、超・寝不足だった。


怯えたように震える藍が眠りにつくまで、いや、眠りについた後も又夢にうなされるんじゃないかと心配で、結局床に戻ったのが明け方近く。


実際眠ったのは、2時間ほどだろう。


藍も寝不足の筈だが、若さの勝利か、見る限りは元気そのものだ。


「動物園なんです。私、一度本物の動物、見てみたかったんですけど、……だめですか?」


いつもは拓郎が誘ってみても、「人混みが、苦手なんです」と外出したがらない藍が、自分から言い出したのだ。駄目なはずは無い。

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