蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

藍から言い出さなければ、拓郎の方で何処かに連れ出そうと思っていたのだから、渡りに船だ。


あまり人混みじゃない方が良いかと思っていたが、藍がその気なら問題ない。


人間、たまには気晴らしが必要だ。


「こんな美味しそうな弁当を食べさせて貰えるんだったら、張り切ってお供しちゃうよ。動物園か、この辺だと上野だな。美奈さんたちも一緒?」


「いいえ。ご一緒にって誘ったんですけど、『馬に蹴られるのは嫌だから』って、断られちゃいました」


と、藍は肩をすくめてクスクス笑う。


あの人は、又、藍に何かよからぬ入れ知恵したんじゃなかろうか?


クリスマスの時も然り。


バレンタインの時も然り。


今まで、ことあるごとに、美奈の有り難い助言という名の入れ知恵の存在を事後確認している拓郎は、思わず疑ったが、藍の口振りでは今回、それは無さそうだ。

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