蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
突き当たりの木製の大きな扉の前まで、受付嬢の後を、拓郎は無言で付いて行く。
「会長、お連れ致しました」
ノックの後、受付嬢の掛けた声に数瞬の間をおいて、スッと扉が開いた。
「どうぞこちらへ。お待ちしておりました」
そう言って拓郎を部屋の中に招き入れたのは、拓郎よりは5センチほど背の高い、痩せぎすの、メガネを掛けた神経質そうな風貌の男だった。
年齢から言って、日翔会長ではあり得ないので秘書と言った所か。
拓郎に向けられる視線は、酷く非友好的だ。
向けられる感情を善し悪しで計るなら、間違いなく悪い方。
『雑誌記者風情が』という電波を、ひしひしと感じる。
間違っても、友人にはなれないタイプだ。
拓郎は素早くその男を観察すると、『カマキリ』とあだ名を付けた。