蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「心電図を計ってる」
至極当然と言ったふうな答えに、藍のこめかみはピクピクと震えた。
元々、ハッキリした気性で、そんなに気の長い性格ではないのだ。
特に、子供扱いされるのと、嘘を付かれるのが大嫌いだった。
「嘘付いたのね!」と声を上げかけたその口元に『しーっ』と柏木の人差し指が伸びて来て、藍は『うっ……』っと顔を赤らめて声を詰まらせた。
「今は、出てはいない、と言うだけだ。いつ本格的な心臓発作が起こってもおかしくない状態だと言うことを、自覚しなさい」
穏やかに諭すようにそう言うと、柏木は目だけでフッと笑う。
「君に、日翔老人の相手は無理だよ。これでも、助けてあげたつもりなんだが、余計な事をしてしまったかな?」
『助けてあげた』を妙に強調して言うと、今度は、口元をほころばす。
――ずるい、と藍は頬を膨らました。
普段、仏頂面な分、その笑顔は一種の武器だ。
特に、藍には効果てき面で、こんな風に笑顔を見せられたら、何も言えなくなってしまう。