蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「大沼 藍は五ヶ月の胎児だった日掛 藍から作られた。その寿命の差は、理論上五ヶ月しかないはずだが……、それもあくまで推測の域を出ない――」
柏木は一つ深く息を吐くと、やはり淡々と話しを続ける。
ただ、その目はそれまでとは確実に違い、厳しい光をはらんでいた。
「クローン体とは、非常に不完全な個体なのだ。
動物実験では100%の確率で、短命に終わる。
生殖機能も極端に劣る。
よしんば、子供が生まれても、育った例はない。
それでも君は、彼女と生きる道を選ぶのか?」
それは、妥協を一切許さない、厳しい問いだった。
藍に明るい未来はない。 それでも愛せるのか?
でなければ、関わるな。
そう言っているのだ。
だが、拓郎には、何も迷うことなどなかった。