蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「た……くろ、待って、足、おかし……」

そこまで言った時、ガクンと完全に足の力が抜け落ちた。
 
「ああっ?」

グラリと揺れる視界。世界が、ぐにゃりと歪む。

気持ち悪い――。

「藍!?」

バランスを崩して倒れ込みそうになるのを、辛うじて拓郎に支えられる。

何!? 

私、どうなっちゃったの!?

「足……おかし、の。全然力、入らな……」

可笑しいのは、足だけじゃない。ろれつもかなり怪しい。

この感覚は、そう丁度、生態低温維持装置から出された直後のあの時に似ている。

でも、なぜ!?

「やっぱり、無理か」

「えっ?」

呟く拓郎のセリフに、藍は何とか顔を上げる。

拓郎は、私のこの症状の原因を知っている?

その真意を聞こうと口を開いたとき、背後がにわかに騒がしくなった。複数の男の人の切迫したような話し声が以外と近くに聞こえた。

その声が、だんだんと近付いてくる。

多分、岡崎秘書の差し向けたガードマンだ。

ダメだ。このままじゃ捕まる。

この状態で捕まったら、拓郎に迷惑がかかってしまう。

藍は焦った。



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