蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「あの、カメラが……」

藍が、すまなそうにカメラを指さす。

「!?」

藍をそっと離すと、拓郎は、放り出してしまった大事な商売道具のカメラを持ち上げた。

「大丈夫?壊れていない?」

「ああ、大丈夫だよ。心配ない。下が柔らかい土だからね。やっぱり、遠出は止めておいた方が良かったんじゃないか?」

カメラに付いた土をフーっと払いながら言う拓郎に、藍が笑顔で答える。

「水口先生が、少しは動いた方が良いって、許可を下さったんだもの。大丈夫よ。病気じゃないんだもの」

そう言って楽しそうに、くすくす笑う。









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