蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


「お久しぶりです衣笠(きぬがさ)教授。……少し痩せられましたか?」


そこは、日本の経済界のトップに君臨するあの『日翔グループ』の一研究施設、日翔生物研究所の来客用の応接室だった。


浩介がそこを訪れた時、懐かし気に目を細めてその老教授は破願した。


「良く来てくれたね、柏木(かしわぎ)君。元気そうで何よりだよ」


握手を交わしながら浩介は、目の前の人物が、記憶にある衣笠の容貌よりも大分やつれてる事が気になった。


量の多い強そうな髪に白い物が増えて、人の良さそうな目尻の笑い皺も、深さを増していた。


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