蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

至極まともな浩介の質問に、衣笠が答えようとした時、二人の少女がこちらに気付いた。


「あっ、先生!」


満面の笑みを浮かべ、まるで小犬のようにじゃれ合いながら、走り寄って来る。


「衣笠先生、さっきね、前田さんに”あやとり”おそわったのよ!」


そう言って黒髪の少女が、小さな手に絡んだ赤い毛糸を掲げて見せた。


「そうか、それはよかったね」


子供達の目線に会わせて、かがみ込みながら、衣笠が穏やかに笑う。


そして、少女達の頭を代わる代わる、くしゃくしゃっとかき回した。
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