蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

六年前、幼なじみの日翔 源一郎から連絡があったのは、長年連れ添った妻を病気で亡くし、まるで抜け殻のようになっている時だった。


「孫を助けて欲しい――」


源一郎の願いに、医者でありながら、妻の病には無力だった自分にも救える命がある……。


いや、むしろ何かに没頭していたいだけだったのかもしれない。


一も二も無く、彼の申し入れを受け、勤めていた大学を辞め、この研究所にやって来た。


日翔グループの、無限とも言える資金力を得た上の研究の成果は、目覚ましい物があった。


そして、クローン実験の成功。


「正気の沙汰ではないな……」 


『マッド・サイエンティスト』 


まさに自分は、『悪魔に魂を売った狂った科学者』に他ならない――。


苦い自覚が、病み衰えた痩せたその身体を支配していた。


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