蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「もちろん、私がお腹を痛めて産んであげられる訳じゃないけど……。


先生は、迷惑?


私との子供なんかじゃ、嫌?」


迷いのない真っ直ぐな瞳が、少しだけ陰る。


「いや、そんな事はないよ」


そうだな、それも悪くはないかもしれない。


彼女は近々、長い眠りに付く。


彼女には今の医療技術では治療不可能な、先天性の内臓疾患があり、このまま何もせずにいれば、あと数年の命なのだ。


『コールド・スリープ』


いわゆる、人工冬眠のような物だ。


未来の医療技術の進歩に望みを繋いでの、今できうる唯一の選択肢。


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