*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
汀を止めるため、藤波は手を伸ばそうとしたが、縛られたままでは思うようにいかない。




隣で気を揉んでいる藤波に気づくこともなく、汀は息吹を見上げる。





「ねぇ、息吹さん!


あなた、ここの頭領なんでしょう?


その泉の場所、もちろん知っているわよね?」





「そりゃ、知ってるが………」





息吹が迷うように長い睫毛を伏せた。





「………俺は、行かない方がいいかもしれない」





真摯な声音に、汀は目を瞠った。





「あら、どうして?


『青瑞の姫』に会いたくないの?」





「いや、本当にいるのならば、会ってみたいが………」





「じゃあ………」






そこで息吹は、辛そうに眉を顰めた顔で汀を見つめ返した。






「ーーー俺のような美しすぎる男が、もしも泉の精霊に会ってしまったら。



精霊は必ずや俺に惚れてしまうだろう?」








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